May 27, 2025

SOMとは|獲得可能な市場規模を見極め、短期目標を設定する方法

新規事業開発

どんなに大きな夢を描いても、足元の現実的な目標を見据え、着実に達成できなければ、事業は前進しません。

SOMは、自社の現在の実力と戦略に基づき、現実的に獲得できる市場規模を示します。

SOM (Serviceable Obtainable Market) とは

SOM(ソム)は「Serviceable Obtainable Market」の略称です。

これは、自社がアプローチ可能な市場の中から、さらに自社の製品力、販売力、マーケティング力、そして競合状況などを考慮した上で、短期間(通常1年から3年程度)で現実的に獲得できると見込まれる市場規模、あるいは市場シェアを指します。

なぜ「Obtainable (獲得可能)」なのか?

「Obtainable」という言葉が示す通り、SOMは「獲得できる」と見込める市場です。

これは、単に製品を届けられるというだけでなく、顧客に選ばれ、実際に売上として計上できる規模を意味します。ここには、競合他社との競争に打ち勝ち、顧客から支持を得るという、ビジネスの厳しい現実が反映されています。

だからこそ、SOMはスタートアップの短期的な目標設定やリソース配分において、最も重要な指標の一つとなるのです。

なぜSOMの算出がスタートアップの短期戦略に必須なのか?

SOMを明確に定義し、算出することは、スタートアップが日々のオペレーションを遂行し、短期的な成長を遂げる上で、羅針盤のように不可欠な役割を果たします。

具体的な売上目標・KPI設定の基礎

SOMは、四半期や1年といった短期的な売上目標や、それを達成するためのKPI(重要業績評価指標)を設定する際の、最も直接的な根拠となります。

例えば、「SOMが10億円で、初年度に10%のシェア獲得を目指す」と設定すれば、売上目標は1億円となり、そこから逆算して必要な顧客獲得数や商談数といったKPIを設定できます。

具体的で現実的な目標は、チームの士気を高め、行動を促進します。

営業・マーケティングリソースの最適配分

スタートアップのリソースは常に限られています。SOMを明確にすることで、最も効果的に売上を上げられる顧客セグメントやチャネルが明らかになり、そこに営業やマーケティングのリソースを集中投下することができます。

無駄な活動を減らし、投資対効果(ROI)を最大化するための重要な判断材料となるのです。

投資家への実行可能性を示す指標

投資家は、大きなビジョン(TAM)だけでなく、それを達成するための現実的なステップ、すなわち実行可能性も厳しく評価します。

SOMを算出し、その獲得戦略を具体的に示すことは、「我々はこのようにして、まず足元の市場を確実に獲得し、成長していきます」という力強いメッセージとなり、投資家に対する信頼性を高めることに繋がります。

地に足のついた計画は、投資判断において高く評価されるでしょう。

▼TAMについて詳しく知りたい方はこちら
TAMとは|市場規模のポテンシャルを示す重要指標を解説

▼TAM・SAM・SOMの関係性について知りたい方はこちら
TAM・SAM・SOMとは|市場規模の算出方法を解説

SOMの具体的な算出方法

SOMを算出するには、SAMをベースにする方法と、より現場に近い情報から積み上げる方法があります。どちらの方法を用いるにしても、その根拠を明確に示すことが重要です。

SAMからのアプローチ (市場シェア率の推定)

一つの方法は、まずSAM(アプローチ可能な市場規模)を算出し、その中で自社が獲得可能と考える市場シェア(%)を掛け合わせる方法です。

「SOM = SAM × 想定市場シェア率」という計算式になります。この「想定市場シェア率」をどう設定するかが鍵となり、競合の強さ、自社の製品の優位性、販売力などを考慮して、現実的な数値を設定する必要があります。

▼SAMについて詳しく知りたい方はこちら
SAMとは|アプローチ可能な市場規模を把握し、戦略を具体化する方法

ボトムアップアプローチ (顧客獲得数の推定)

もう一つは、自社の営業チームがアプローチできる顧客数や、マーケティング活動によって獲得できる見込み客数、そしてその成約率などを基に、獲得可能な顧客数を算出し、それに顧客単価を掛けてSOMを算出する方法です。

「SOM = 獲得可能顧客数 × 顧客単価」となります。こちらは、自社の活動量に基づいているため、よりアクションに直結した数値を導き出しやすい特徴があります。

シェア率や顧客数をどう推定するか? - 根拠の示し方

想定シェア率や顧客数を推定する際には、希望的観測ではなく、客観的な根拠を示すことが重要です。

例えば、競合他社の実績、類似市場での事例、自社のテストマーケティングの結果、営業パイプラインの分析などを基に、「なぜこのシェア率(顧客数)が達成可能と言えるのか」を具体的に説明できるように準備しておくことが求められます。

算出に必要なデータと情報収集

SOMの算出には、SAMのデータに加え、競合分析レポート、自社の営業・マーケティングデータ(訪問数、成約率、CPA、LTVなど)、顧客アンケート、業界の専門家へのヒアリングなどが有効な情報源となります。

これらの情報を組み合わせ、多角的な視点からSOMを推定することが望ましいでしょう。

SOMを高めるための戦略とは?

SOMは固定的なものではなく、企業の戦略や努力によって拡大していくことが可能です。SOMを高めることは、事業の成長そのものです。

競合分析と差別化戦略

競合他社がどのように市場を獲得しているかを分析し、自社の製品やサービスが持つ独自の強み(差別化ポイント)を明確にして、顧客に訴求していくことが基本です。

競合が手薄な領域を狙ったり、競合よりも優れた価値を提供したりすることで、シェアを奪取し、SOMを拡大します。

営業・マーケティング活動の強化

ターゲット顧客に対して、より効果的な営業アプローチやマーケティングキャンペーンを展開することで、認知度を高め、顧客獲得数を増やすことができます。

デジタルマーケティングの活用や、インサイドセールスの導入、効果的な広告宣伝などが具体的な手段となります。

製品・サービスの改善と付加価値向上

顧客の声に耳を傾け、製品やサービスを継続的に改善し、顧客満足度を高めることは、既存顧客の維持だけでなく、新規顧客の獲得にも繋がります。

顧客が求める付加価値を提供し続けることで、市場での評価を高め、SOMを押し上げることができます。

パートナーシップの活用

自社だけではアプローチが難しい顧客層や市場に対して、他の企業とパートナーシップを組むことで、販路を拡大し、SOMを広げることが可能です。

相互の強みを活かせるパートナーを見つけることができれば、成長を大きく加速させることができるでしょう。

SOMを算出・活用する際の注意点

SOMは有用な指標ですが、その取り扱いにはいくつかの注意点があります。これらを理解しておくことで、より効果的にSOMを活用できます。

過度に楽観的・悲観的にならない

SOMを設定する際には、希望的観測だけで高すぎる数値を設定したり、逆にリスクを恐れて低すぎる数値を設定したりしないよう注意が必要です。

客観的なデータに基づき、挑戦的でありながらも達成可能な、バランスの取れた目標を設定することが重要です。

算出根拠の透明性

SOMの数値を提示する際には、必ずその算出根拠を明確に示す必要があります。

どのようなデータを基に、どのような仮定を置いて算出したのかを透明にすることで、その数値の信頼性が高まり、社内外の関係者からの理解と協力を得やすくなります。

SOMは静的ではない - 常に変化する

市場環境や自社の状況は常に変化するため、SOMも一度設定したら終わりではありません。

定期的に市場や競合の動向を監視し、自社の実績を評価しながら、SOMを見直し、更新していく必要があります。

SOMは目標であり、限界ではない

SOMは短期的な目標を設定するための重要な指標ですが、それは決して自社の成長の限界を示すものではありません。

SOMを達成したら、次の戦略を立て、さらに大きなSAM、そしてTAMへと挑戦していく、そのためのマイルストーンとして捉えるべきです。

まとめ:SOMを明確にし、着実な成長を実現しよう

SOMは、足元を見つめ、現実的な戦略を立て、着実な一歩を踏み出すための、極めて重要な経営指標です。

TAMが示す大きな夢と、SAMが示す現実的な戦場を理解した上で、SOMという具体的な目標を掲げること。そして、それを達成するための戦略を実行し、その過程でSOM自体を拡大していくこと。

これこそが、持続的な成長を遂げるための王道と言えるでしょう。

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